計画実行・監視専門調査会(第18回)議事録 | 内閣府男女共同参画局
掲題の件、見て行きたいと思います。第2回 第6次基本計画策定専門調査会を批評してみるで、大崎麻子さんが言及している会議がこちらになります。
議題の一つが「アンコンシャス・バイアス」についてであり、2022年(令和4年)11月8日の時点でこの用法についての疑義が委員から出されている事が分かります。
まず、令和4年8月、内閣府男女共同参画局が行ったアンコンシャス・バイアスに関する調査の報告がなされています。
○畠山大臣官房審議官 (男女共同参画局担当)
「実は昨年度も調査を行いましてこの専門調査会に御報告させていただきました。その際に、アンコンシャス・バイアスという無意識の思い込みということでありますけれども、そういうものの性質上、なかなか是正していくのが難しいのではないかといった御意見、また、一方でそういう中で無意識の思い込みと差別的な考え方というものが一緒になって扱われているというようなことについても御指摘いただきました。そういうことも踏まえながら、私どものほうで完全にその関係が整理されているかと言われると、正直に申し上げるとなかなか難しいところもございますけれども、この調査に当たりまして、前回調査に携わっていただいた有識者の先生に加えまして、アンコンシャス・バイアスを比較的御専門ということで担当されておられます学識経験者の方にも御参加いただきまして、改めて調査を行ったというものでございます。」
→ 既に2021年(令和3年)には用法の扱いについて指摘があった、と述べています。しかし、改めて行った調査は前年度と同様のアンケート方式でした。この結果分かるのは、「意識」になります。また、「無意識の思い込み」という用語は、「何となくの言動が現代の社会的規範に照らして偏っていることがアンコンシャス・バイアスである」という誤用を招くので使わない方が良いと思います(参考:心理学の辞典にはない「アンコンシャス・バイアス」と、独自解釈ならば問題なし?、 一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の定義に関する声明を深掘りする)。
○佐藤会長 (中央大学大学院戦略経営研究科教授)
「アンコンシャス・バイアスで気をつけなければいけないのは、男性は仕事をして家計を支えるべきだと例えば回答者の50代の人が思っている。自分はそうやって生きた。誤解を恐れずに言うと、これは悪いわけではないのです。問題は、その人が管理職だったとして、自分の部下にそうすべきだと言ったり、あるいは部下がそうしないことをマイナスに評価するのが問題なのです。」
→ 「アンコンシャス・バイアス」は「思っている」事ではありません。この発言からは佐藤さんは所謂「偏った考え方」を「アンコンシャス・バイアス」と捉えてるようですが、それは誤りです。佐藤さん発言の意は、少し古風には「価値観の押しつけは良くない」と表現されるものだと思います。
○白波瀬委員 (東京大学大学院人文社会系研究科教授)
「一つは、今、佐藤先生との関連で言わせていただいたのは、どちらかというとコンシャス・バイアスなのです。意識調査に関してです。ここでの結果をもってアンコンシャス・バイアス云々というところ議論を立てるのはなかなか難しいだろうということです。有識者の先生も関係しておられますし、それなりの理由はあると思います。でもこの結果をどう読むのかというのは、私も少しよい意味でも悪い意味でもコンセンサスを得て公表されたほうがいいように思います。」
→ 内閣府男女共同参画局が行ったアンコンシャス・バイアスに関する調査を実態に即して「意識調査」と捉えています。その為、この調査ではアンコンシャス・バイアスについて議論を立てるのは難しいと述べており、妥当な意見だと思われます。しかし「有識者の先生も関係しているから、それなりの意味がある」という論理は、良く分かりません。これまで紹介した様に、ある分野での専門性や権威をもとに自分が専門外の領域についても十分な知識があると過信してしまう事はありますし(日本学術会議もアンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)を誤用している)、また学術的な知識が不十分でも有識者として扱われる事があります(一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の定義に関する声明を深掘りする、アンコンシャス・バイアスへの気づきは、 ひとりひとりがイキイキと活躍する社会への第一歩202105.pdf)。
○大崎委員 (関西学院大学客員教授)
「御報告の冒頭でも指摘いただきましたけれども、無意識のバイアスと意識的なステレオタイプ、ジェンダーバイアスというのはしっかりと分けるということが重要です。無意識のバイアスの問題は男女間賃金格差とも深く連動しています。無意識のバイアスが採用、登用、職務の割振に作用している。そこで、無意識のバイアスが作用しない人事等の仕組みをいかにつくるのかがポイントですから、そこをしっかり見ていく必要があると思います。
一方、昨日の日経新聞のコラムが「無意識のバイアス根強く」というタイトルになっているのですが、この内閣府の調査が引用されていて、紹介されているのは意識レベルでの性別役割分業に基づく固定観念、先入観です。やはりこういう形で独り歩きしてしまうわけです。それと同日の昨日、今日御欠席ですが、東大の山口先生がコラムを書かれていて、リファラル不採用への有用性に言及されているのですが、アンコンシャス・バイアスが弊害になり得るということを述べておられます。こうした正しい認識が周知される必要があると思います。」
→ より細かく述べると、用語として潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)とその他のステレオタイプやジェンダー・バイアスを混同してはならない、という事です。ここで、各自の心の持ちようというより「仕組み」に言及している所が重要だと思いました。この分野の業者が出す書籍は主に個人の「心の持ちよう」、つまり意識啓発に焦点を当てています(心理学の辞典にはない「アンコンシャス・バイアス」と、独自解釈ならば問題なし?)が、潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)にその効果の裏付けは乏しいからです(潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)は克服できる?、研修やセミナーは、有効なの?)。
○治部委員 (東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授)
「私も全く同じなのですけれども、内閣府がやる調査というのは結構権威をもって世の中の人が引用します。それから、最近私もいろいろな地方公共団体の講演や男女共同参画センターの啓蒙の冊子、広報誌で認識バイアスに関するインタビューを受けるという機会が非常に増えています。恐らく日本人にとってなじみやすいなと思うのですが、差別ですと言われると、本当は差別している人でも差別ではないと言って、かえって話に抵抗を示してしまうという中で、それは無意識バイアスですと言ってあげると問題を指摘しやすいというような事情もあるのかなと思うのですけれども、大崎委員、白波瀬委員、佐藤先生もおっしゃっているとおり、やはり無意識バイアスと固定的男女役割分担意識とは明確に分けて発信しないと政府機関としてはまずいと私も思っております。その意味で、男性はこれこれ、女性はこれこれと思いますがと明示的に聞いてイエスというのは、これはずっと内閣府が調べている固定的性別役割分担意識であるということを改めて強調したいと思います。
通常、無意識バイアスをはかる、これは企業研修、大学でも研修を最近やっておりますけれども、よく使うのが、これは多分ハーバードで作ったものではないかな。IATテストというものがあって、いろいろな言葉の組合せを何も考えずにどんどんやっていくのです。そうすると、表向きは自分は例えば共働きに賛成とか、女性は家庭、男性は外なんてことは思っていませんよと言っている人でさえ、例えば女性と仕事を結びつけるようなキーワードの文面に対しては反応が遅くなる。逆に男性と家庭を結びつけるような言語の分類は反応が遅くなる。つまり、それはまさに無意識でそのようなことが出てしまうということをはかるツールというものは既にありますし、日本の組織の中でも研修等で使われているので、無意識バイアスという場合にはそういったきちんと科学的に立証されたものを内閣府として使っていただきたいと思います。
ただ、この調査自体は私は意味があると思っておりまして、つまり、日本の社会全体はまだ無意識バイアスを論じる段階ではないのではないかと思うのです。これは佐藤先生もおっしゃいましたが、高学歴の方に女性に家庭にいるべきだと思いますかと言われたら、建前上ノーと言う人は結構多いです。私も大学に勤めるようになって、皆さんよく意識レベルでトレーニングされているのでノーと言うのですけれども、ただ一方で、この会議の中でも地方からいらしている委員の方もいらっしゃいますけれども、地方においては、いまだに女性で若い人が働いていると、まだ結婚はしないのかみたいなことを言われたりする。これはバイアスというのか、差別というのか分かりませんが、こういういろいろなレイヤーの人たちがいる中で何をどう問題視するのかというところはやはり政府の仕事としてきちんとやっていただきたいと思います。
最後になりますが、これも佐藤先生のおっしゃるとおりで、個人がどのような価値観を持っているか自由である。どうしたいかはそこの家の自由で、勝手にやっていただければいいのですけれども、何が問題かというと、その人が権力を発揮するときに、自分と異なる価値観を持っている人に対して、まさに無意識的に抑圧するとか差別的に扱うというところに問題がある。この辺りのところを、お分かりだと思うのですけれども、内閣府は的確に言語化してぜひ発信していただきたいと思います。」
→ この行政に対する提言は、2025/12/20現在の状況に対しても言える重要なものです。内閣府はこの2022年末の治部委員の指摘から、そのサイトに注釈を付ける2024年末までの2年間、意識調査を無意識調査として掲載していた為、多くの自治体が誤解した解釈を展開してしまいました。私が各都道府県の男女共同参画センターに調査したところ、多くが内閣府のサイトを参考にしていたのです。今からでも内閣府男女共同参画局はそれぞれの男女共同参画センターに通知すべきと考えます。これ以上混乱を招く展開の仕方は改めるべきです。
○佐々木委員 (お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所特任教授)
「私のほうから、科学技術の発展に寄与する120学会が加盟している男女共同参画学協会連絡会の行った大規模アンケートの自由回答から見えるアンコンシャス・バイアスのデータを紹介したいと思います。
今日お話しすることは、学会のホームページの無意識のバイアスコーナーに載っておりますので、ぜひ御覧ください。
今回の回答者は大体2万人くらいのアンケート調査なのですけれども、その中の自由回答者3,719の内容を調査したものです。
回答から見えてきた人事に関わるようなアンコンシャス・バイアスとして、女性は男性に比べて能力が劣るとか、女性は組織になじまない、女性にはリーダーが務まらない、女性は責任ある地位を望まないなどがありました。」
→ 残念ながら、アンケートは「意識調査」です。
○井上委員 (日本労働組合総連合会総合政策推進局長)
「本日内閣府から出された資料には、性別による無意識の思い込みに括弧をつけて、アンコンシャス・バイアスと記載されていますが、無意識の思い込みだけでは不十分であるため、「偏見・無意識の思い込み」とするなど、偏見ということをきちんと記載していただきたいと思います。アンコンシャス・バイアスは、単に思い込みにとどまらず、今までの生活、習慣で無意識にできている考え、一種の偏見であり、連合でもこの点も踏まえ、アンコンシャス・バイアスを使うときには偏見という言葉を入れるようにしています。
本日ご説明いただいた、資料・アンコンシャス・バイアスに関する調査結果をみると、
「男性は出産休暇/育児休業を取るべきではない」「仕事より育児を優先する男性は仕事へのやる気が低い」というのがあるのですけれども、これは育児休暇を取得しようとする男性に取得を許さない、あるいは嫌がらせなどをするマタニティハラスメントに該当することだと思うのです。なので、そこを注意していかないと、何でもかんでもアンコンシャス・バイアスにまとめられてしまうと、均等法に違反するようなことなども入ってきていますので、きちんと整理をした上で、これからホームページなり、SNSなり、何かガイドブックを作る時には、注意をして取り組みを進めていただければと思います。」
→ アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)は偏見ではないと、提唱者達は繰り返し様々な媒体で述べています(潜在的バイアスと、偏見:「無意識の偏見」という訳について、内閣府男女共同参画局の注釈について、考える)。井上さんには適切に理解して頂きたいと思います。
何でもかんでもアンコンシャス・バイアスにまとめられてしまう、という懸念はその通りだと思います。現在の日本で散見されるのはそういった用法です(日本での誤用:その他、独特の解釈(決めつけ・押しつけ、自己防衛心、無意識の思い込み、etc))。結果、社会は本来の研究から目を逸らされ、効果の検証されていない研修やセミナーが隆盛を誇っています。
ちなみに連合のサイトでは、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の教えをそのまま掲載し、自省して分かるものを「アンコンシャス・バイアス」としていますが、学術的には誤りになります。連合へはフォームで何度も申し入れしていますが、返事はありません。
まとめ:
この会議は、学術的な理解に基づいた「アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)」が展開されるべきである、令和3年度の「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究」は不十分な理解に基づいている、という事が指摘されている非常に重要な会議となりました。これが十分に施策に活用されなかった要因は、内閣府男女共同参画局がこの指摘に真摯に対応しなかった結果ではないでしょうか。結果的に、国民に誤用を長く展開する事になりました。
2025/12/20 初版は急いで出したので、色々追記や修正。
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