地方創生2.0:第二回有識者会議 - 石破首相の資料における誤用の重大性 -

掲題の件について紹介し、意見を述べたいと思います。

第二回有識者会議は、令和6年12月11日に開催されました。

そこで紹介された「日本創生に向けた人口戦略フォーラムinとっとり 石破総理説明資料」(siryou3-1.pdf、令和6年度11月30日との日付)の3ページでは、「自地域・自社に男女間格差はないという「アンコンシャスバイアス」(無意識の思い込み)の解消を図る」との記載があります。



まず、「アンコンシャスバイアス」に(無意識の思い込み)という日本語をつけるのは不適切だと考えます。


さらに、ここでの「アンコンシャスバイアス」は単に「思い込み」という意味ではないでしょうか。「思い込み」は自覚する事が難しいため、「気づいていない」という日常的な意味での「無意識の」を重ねて付ける必要は無いように思います。そしてアンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)は、「思い込み」と関係しますがそのものではありません。さらに、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)は主に社会的属性(人種、性別、年齢など)に関するバイアスについて使われます。「自地域・自社に男女格差はない」というように使用されているのは、寡聞にして初めて聞きました。そしてそれに気付いている・気付いていないは、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の有無と関係しません。

参考:
日本アンコンシャス・バイアス研究会: 潜在的バイアスの研究は、何を解きたいのか?:「顕在的」と「潜在的」の関係

この資料を受けて、会議では以下の様に岩井審議官が述べています(gijigaiyou2.pdf)。

「自分の地域、自分の会社では男女間格差はないというアンコンシャスバイアスがある、このアンコンシャスバイアスの解消が必要であり、本当に格差はないのかをそれぞれ検証しましょうというお話がございました。」

先ほどの石破さんの資料同様、この「アンコンシャスバイアス」を「思い込み」と言い換えても、岩井さんの意図は変わらないと思います。

馴染みのない用語であり横文字の「アンコンシャスバイアス」を用いる事は、人に新鮮な印象を与え関心を引く効果があると思いますが、使い方を誤っていれば結果的に自分達への否定的評価につながります。今回は特に総理大臣である石破さんの名前で発表された資料であるため、否定的評価という影響力は大きいと考えます。

DEI運動は一見理のあるもしくは美しい提言をしている様に聞こえますが、その内容やそれを説く人、その方法論が正しいとは限りません。しかしそれらは感覚的に近く、「正しい」と思い込んでしまう傾向があると考えます。結果、内容を自分達でよく検討せずに展開してしまい、今や誤解された「アンコンシャスバイアス」(無意識の思い込み)は総理大臣の発表資料に登場するまでになったのではないでしょうか。

国際的な視点で見た場合これは恥ずべき事です。日本政府の参謀役は大して機能していない事を自ら喧伝しているようなものです。日本は国連等の国際会議でどういった定義の「アンコンシャス・バイアス」を語るのでしょうか?

また、これは日本の政策検討の脆弱性を示しているとも言えます。危機管理の抜け穴であり、効果は検証されていないが一見理のある美しい提言がこれからも行われ、予算が徒に浪費される可能性があります。

馴染みのない横文字用語などを導入する際、多角的検証と説明責任の所在を明確化する事は、必要不可欠だと思います。また、導入前に相手に十分説明責任を果たさせるカウンターパート(この場合相応に議論できる窓口)を受け入れ側は設置する事を検討すべきだと思います。

2025/04/05
「そしてそれに気付いている・気付いていないは、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の有無と関係しません。」文言追記。

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