第7回 第6次基本計画策定専門調査会を批評してみる -パブリックコメントが誤用を指摘する-

 第6次基本計画策定専門調査会(第7回)及び計画実行・監視専門調査会議事録 | 内閣府男女共同参画局

掲題の件、見て行きたいと思います。

この会議では、パブリックコメンや公聴会の意見などを踏まえて修正した「第6次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方(案)」についてでした。パブリックコメントでは「アンコンシャス・バイアス」という用語の使い方について、非常に重要な意見が寄せられています。


第6次男女共同参画基本計画策定に当たっての基本的な考え方についての公聴会及び意見募集に寄せられた意見 | 内閣府男女共同参画局

寄せられた意見の中から、アンコンシャス・バイアスの定義に関わるものを抜粋します。


1.また、全体としてアンコンシャス・バイアスを無意識の思い込みと訳すのは、思い込み自体が意識的にされており誤用だと思われるので、文言の検討をしていただくようお願いします。


2.基本計画にアンコンシャス・バイアスという用語が出ているが、その調査の実施(R3,4)や啓発事業は誤った定義に基づいたものです。国際的にも学術的にもおかしなものなので、この用語を使用した計画の部分を再考すべきと思います。本来、アンコンシャス・バイアスは無意識に形成されるものなので、国民に向かって、アンコンシャス・バイアスをなくそうと啓発するのはばかげています。そうではなくて、アンコンシャス・バイアスを形成させてしまう、国や社会の構造そのものを点検するべきです。この誤用の背景には、専門性のないコンサルに頼らざるを得ない状況があったと推測されます。男女共同参画局の職員には、その分野に関心があり、専門性の高い人材の配置を強く求めます。


3.無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)という言葉について、日本では誤用されていることが指摘されています。具体的には、「無意識」を「悪気がない」「自分では気づいていない」という意識上の「無自覚な偏見」と混同している点が挙げられています。内閣府の調査 における誤用と中学校の教科書に掲載されたことは大きな問題であり、早急に訂正をすることを提案します


4.(2)意識・価値観の動向・変化」最初の○について、「それ以外にも、無意識の思い込 み(アンコンシャス・バイアス)の存在により、無意識のうちに、性別による差別・区別が生じることもある」について。男女局の「アンコンシャス・バイアス」は、適切でない形で使われているため、修文すべきである。 修文案;「それ以外にも、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)の存在により、性別による差別・区別が行われていても、本人が気がつけないことがある。」


5.アンコンシャス・バイアスについて、「意識啓発により解消する」「理解促進を行う」という記述がたびたび登場します。しかしアンコンシャス・バイアスとは個人の「無意識下にある 思い込みや偏見」のことであり、6次計で使用されているアンコンシャス・バイアスのほとんどは、意識下にあるジェンダーステレオタイプのことを指していると考えます。 アンコンシャス・バイアスが原因で起こりうる問題は個人で解決することは非常に難しいです。なので、そのアンコンシャス・バイアスが作用しない構造(しくみや制度)を構築する必要があり、行動を起こすべきは政府や行政、企業なのです。個人の努力では限界があります。 アンコンシャス・バイアスと述べている点はすべて「ジェンダーステレオタイプ」と言い換えるべきだと思います。


6.女子児童・生徒、保護者及び教員の理解促進にもあるが、そもそもアンコンシャス・ バイアスから誰も逃れられられず、個人の認識の歪みが発生するのをどうやって防ぐかという観点が必要。バイアスの払拭を個人の責任にしていても慣習・慣行は変えられない。アンコンシャス・バイアスを性役割意識という意味で使用されているのではないかと疑問に思う。


7.無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)という用語に学術的定義が存在するのであれば、出典を明示したうえで説明してもらいたい。「無意識」も「思い込み」も人によって想像する範囲が異なると考えている(第1部 2(2) p.5)


8.内閣府が過去に行なった「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス) に関する調査」では、すでに人々の意識の中にあるものを引き出したにすぎず、本来の意味での「アンコンシャス・バイアス」の顕在化とはなっていませんでした。この語を多用することにどれほど意義があるのか疑ってしまいます。悪意のない偏見や差別が何によってもたらされているのかを明らかにし、その是正に努めるのが行政の役割だと考えます。むろん、人々が日常的に得る情報や社会規範や制度などから変えていくほかありません


9.「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」とあるところはすべて、括弧書き 「(アンコンシャス・バイアス)」を削除すべきである。 【理由】 「アンコンシャス・バイアス」は「無意識の」ものではあるが、「思い込み」そのものではなく、「思い込み」(ここでは「固定的な性別役割分担意識」)や性差別的な言動の原因となる「無意識の偏り」であるため、括弧書きとして正確でない。

「アンコンシャス・バイアス」を問題視するのであれば、本計画の中で「アンコンシャス・ バイアス」を正しく定義し直した上で、改めてその対策を盛り込むべきである。


この第6次基本計画には学術的背景を持つ「アンコンシャス・バイアス」という用語が頻出します。問題は、この学問領域の専門家が委員にいない事です。今後、この委員達や内閣府関係者が上記の意見にどのように対応するのか、注目したいと思います。


こども家庭庁 「こども若者★いけんぷらす」男女が共に活躍でき、 暮らしやすい社会について、 一緒に考えよう(対面回)3.pdf

アンコンシャス・バイアスみたいなもの、例え ば「女はこうするべき」とか「男なんだからこうするべき」っていう発言。誰かにそれを向けているわけじゃ なくて、ただ投稿しているだけなのは違法なのかは難しく、それを違法にするか線引きが難しい。

→ これは「顕在的バイアス」であり「潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)」ではありません。


「アンコンシャス・バイアス」という単語が出ているが、例えば「女性は科学技術系の進路に向いてない」 とか「進んでも苦労する」みたいな。アンコンシャス・バイアスがどのような方向性のものか具体的に書 いてほしい。

→ これも「顕在的バイアス」であり「潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)」ではありません。


上から 3 つ目の1行目で「幼少の頃から長年にわたり」と書いてあり、幼少期からアンコンシャス・バ イアスに気をつけて育てること。絵本の読み聞かせの頃から始めてもいいのでは。中学校や高校では なく、ある程度ものわかりがつく前の 幼少期からアンコンシャス・バイアスに気をつけて接するとよりよい と思う。

→ 「価値観の押しつけ」「ステレオタイプ的考え」に気を付ける事は可能だと思いますが、潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)は自省して分かるものとされていません。


基本的方向の一番上の 2 行目について、教員の養成・採用・育成の課程の話で、特に養成に関 して教員免許を取る過程で大学に行く方が多い。でも、教員になる免許を得る段階で、アンコンシ ャス・バイアスが自分たちにあるかもしれないので、それに基づいた教育をしないように、教育の段階で 防止することが大事だと思う。先生方の無意識の偏見をこどもにそのまま伝えないように、大学の段 階から教育するのが重要だと思う。学校は性差別や性役割分担の再生産が起こりやすいので、そ れを防ぐ意味でも大事だと思う。特に学校は校長先生の権限が大きいので、校長に働きかけること は他の教員への影響にもつながるし、構造的に有効だと思う。

→ 「アンコンシャス・バイアス」を「無意識の偏見」と意訳する事は不適切だと思います(潜在的バイアスと、偏見:「無意識の偏見」という訳について)。


基本方向の一番上の部分で男性にも女性にもアンコンシャス・バイアスがあるって宣言しているところ について。差別について学ぶのには段階があって最初は無関心、次に抵抗、次に受容・アサーティブ の時期がある。なので、まず無関心の段階から気づきがあることで学習の段階が進む。無関心から 次段階に移るための「気づき」が明言されているのが大事だと思う。

→ 「アンコンシャス・バイアス」と「差別」とは別です。個人的には、多くの人がこの問題に「気づく」事の必要性に、懐疑的です。個々に認知的負担を強いるより、悪影響が出ないようなシステムを設計する事が重要だと思います。私たちがエスカレータについて大して知らなくても便利に使うように、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)について大して気にせずとも社会生活が送れると良いです。


性暴力について文章では「女性」に限定されているが、女性に制限する必要はあるのだろうか。今は 男性の性被害も問題になっているので、実態を掴むのは難しいがここは男性も含めて考えるべきか もしれない。ある意味アンコンシャス・バイアスなのでは。

→ アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の有無を推論する事は空論になります。それは以下の様なテストで計測されます(アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)を測るテスト、IAT)。


アンコンシャス・バイアスに気づくことが大事だと思う。これまで当たり前だと思って生活してきた中で、 バイアスがあったかもしれないと気づかせるアクションが必要だと思う。

→ アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)は定義として内省して分かる事とされていません。それは以下の様なテストで計測されます(アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)を測るテスト、IAT)。一方で、「多面的な見方が出来るようになる」「価値観の更新がある」事は、大事な事だと思います。


婚活も男女の役割意識が顕著に残っています。動画配信サイトなんかでも女性はこう振る舞うべき、男性はこうするべきみたいな情報がたくさん出ていて、見ていると当たり前になってしまう。そこで性差を一番感じる。男性向けと女性向けでサイトが分かれていることも多く、それを見ていると納得してしまう。 

恋愛の場では男性は女性らしさを求めるが、婚活の場では女性は経済力を求める、男性は家事や育児をサポートしてほしいといった役割分担が求められているように感じる。結婚になると急に求められる条件が変わるのは不思議だなと感じます。

 基本認識と婚活市場で言われていることの乖離が大きい。婚活でアンコンシャス・バイアスが作り上げられてしまっているように思います。

→ 「アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)」というより、多数が望ましいと考える「ステレオタイプ」が作り上げられているのかも知れません。


アンコンシャス・バイアスってすごく普通に存在するものだから、解決方法も意外と普通なやり方で、できないのかと思う。

→ 私も同意見です。「アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)」は学術的には「潜在的バイアス(implicit bias)」と呼ばれ、その研究から学べると思います。また、「偏見」「思い込み」といった誤用の「アンコンシャス・バイアス」は、「価値観の押しつけは良くない」「事実確認は必要」といった意思疎通の知恵を共有することで対応していく事が良いのでは、と思っています。


委員の発言やその他の資料では、「アンコンシャス・バイアス」に関わるものはありませんでした。

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