第1回 第6次基本計画策定専門調査会を批評してみる -一法人の独自定義-

掲題の件、見て行きたいと思います。

口頭では「アンコンシャス・バイアス」については言及されていませんでした。

以下は資料へのリンクと内容の引用、そして私の批評です。

■1(資料5)第5次基本計画のフォローアップにおけるヒヤリング事項(予定)

「男女共同参画は、男性にとっても重要であり、男女が共に進めていくものである。特に、男女共同参画や女性活躍の視点を企業組織のみならず、家庭や地域など生活の場全体に広げることが重要となる。その際、無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)が男女どちらかに不利に働かないよう、メディアとも連携しながら幼少期から大人までを対象に広報啓発等に取り組む必要がある。」

→ 人々の内面に影響を与える広報啓発等を政府とメディアが行うという事には、大きな責任が伴います。そもそも、行政のサイトには未だ多数の誤用である「アンコンシャス・バイアス」が掲載されています(例:アンコンシャス・バイアスを減らす3つのポイント!誰もが活躍できる社会に | 政府広報オンライン)が、その誤った定義のままで行うつもりなのか、内閣府男女共同参画局がつけて下さった注釈のように学術的な用語としての定義(令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 | 内閣府男女共同参画局)で行うのか、明確にする必要があると思います。


■2(資料7-2)国家公務員の女性活躍・働き方改革の状況(内閣官房説明資料)

「管理職員のマネジメント能力の向上 新任管理職向けeラーニング等による意識啓発(管理職の矢上己、アンコンシャス・バイアスの気づき、両立支援制度を利用しやすい環境づくり等)」

→ アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)は定義として気づくことは不可能です。ここでは「アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の影響への気づき」が適切かと思います。


■3(資料9-2)男女共同参画センターにおける業務及び運営についてのガイドライン作成検討に関する提言

「男女共同参画に関しては、アンコンシャス・バイアスや積極的改善措置等、一般に馴染みの薄い言葉が使われることもしばしばであるため、NWECの協力も得て、用語集を作成、配布する。」

→ NWEC(国立女性教育会館、National Women's Education Center)に問い合わせた事がありますが、彼らは内閣府のサイト(例:アンコンシャス・バイアスを減らす3つのポイント!誰もが活躍できる社会に | 政府広報オンライン)から「アンコンシャス・バイアス」の定義を「学んで」います。そしてその内閣府は、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所から「学んで」います(アンコンシャス・バイアスを減らす3つのポイント!誰もが活躍できる社会に | 政府広報オンライン日本での誤用:その無意識調査は何の調査?)。そしてその一法人は最近新聞記事を通じ「独自定義」であると公に認めています(「醬油は何色?」と問われた小学生の回答は? 考えてみよう「無意識の思い込み」 - 産経ニュース)。学術的背景を持つ用語が、日本の行政では一法人による別の意味を持つ「独自定義」になる、というのは、日本の行政の軽薄さを示していると思います。


■4(参考資料4①)第5次男女共同参画基本計画に関する施策の評価等について(第1次分野)

「女性職員の活躍や全ての職員のワークライフバランスに資する取組を率先して行えるよう、管理職として求められる行動・役割について、アンコンシャスバイアス、育児休業、テレワークや休暇取得促進など具体的な例を充実させた研修を管理職を対象として実施している」

→ 潜在的バイアス(アンコンシャス・バイアス)研修に効果があるかは検証されていません(研修やセミナーは、有効なの?)。仮に誤用の方でも、その効果が検証されたという話は寡聞にして聞きません。


■5(参考資料4②)第5次男女共同参画基本計画に関する施策の評価等について(第2分野)

「令和2年度に、初等中等教育の学校現場における男女共同参画において、教員自身の「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」への気付きを促し、男女共同参画の基本理念や意義を整理するとともに、日常の教育活動や学校運営などを男女共同参画の視点から捉え直し、自信の指導のヒントにつながる教員向けの研修プログラムの開発を行い、研修モデルについて周知を行っている」

→ プログラム詳細はこちらになります(男女共同参画の推進に向けた教員研修モデルプログラムの開発:文部科学省)。これはNWECが受けたものですが、内容は「アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)」ではなく「ステレオタイプ」に関わるものになります。文科省に問い合わせましたが、彼らはNWECが作成した内容を検証していないようでした。

また、2で述べたように、定義としてアンコンシャス・バイアスに気付く事は不可能です。


■6(参考資料4③)第5次男女共同参画基本計画に関する施策の評価等について(第3分野)

「性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)について、気付きの機会を提供し解消の一助とするため、令和3・4年度に調査研究を行い公表した。また、調査研究の結果やチェックシート・事例集に基づき、普及啓発用動画の政策やワークショップを開催した。」

→ 彼らが行ったのはアンケート方式の「意識調査」です。アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)について分かる事はありません。内閣府男女共同参画局もこの問題を認知しています(令和4年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 | 内閣府男女共同参画局令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に関する調査研究 | 内閣府男女共同参画局)。ここでも明確に「学術的なものではない」と注記していれば、誤解の拡大を防げたと思います。


■7(参考資料4⑦)第5次男女共同参画基本計画に関する施策の評価等について(第7分野)

「個々の女性労働者の活躍推進を阻む要因となっているアンコンシャス・バイアス向き合い対応するための啓発等の強化のため、人事労務担当者、事業主を対象としたセミナーを開催する。」

→ 4で述べたように、セミナーの効果は検証されていない点に留意が必要です。


■8(参考資料4⑩)第5次男女共同参画基本計画に関する施策の評価等について(第10分野)

「「無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)」への気付きを促し」

→ 2で述べたように、定義としてアンコンシャス・バイアスに気付く事は不可能です。


■まとめ

行政は今後使っていく「アンコンシャス・バイアス」という用語を、一法人の「独自定義」か学術的な定義、どちらを使うのか明確にする必要があると思います。

また、実質的にほぼ全ての内容は一法人の独自定義に基づいたものでした。この事は多くの国民に「アンコンシャス・バイアスとはそういうもの」という認識を植え付ける恐れがあります。学術的背景を持つ用語を別義で用いるなら、学術的な定義も併せて掲載しなければならないと思います。

さらに、各組織は効果や内容を「検証する」という考えがない様に思います。その為、一法人の「独自定義」でも鵜呑みにしたのでしょう。新たな用語を受け入れる際、何か施策する際には、必ず検証するという手順を入れる必要があると思います。

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