日本での誤用:言葉の使われ方の違いから導かれるもの

 次に、守屋 智敬氏と荒金 雅子氏がそれぞれ著した本におけるアンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の解釈について、みていきたいと思います。

 『無意識に偏ったモノの見方をしてしまうことを「アンコンシャス・バイアス(unconscious bias)」といいます。』 (「あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思い込みのせいです」)

 「無意識に偏ったモノの見方をしてしまう」とありますが、この「無意識に」という言葉は、日常生活で使う「無意識に」という言葉、つまり「考えなしに」「意図せずに」「なんとはなしに」という意味での使われ方です。先に引用したチェック項目から、それが裏付けられます。つまり、振り返れば思い当たる事です。

 『アンコンシャス・バイアスとは、「自分自身が気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏り」』(「ダイバーシティ&インクルージョン経営」)

 「自分自身気づいていないものの見方や捉え方のゆがみ・偏り」とありますが、先に引用したチェック項目に照らし合わせると、「気づいていない」との文言は「意識されているものの見方や捉え方が、ゆがみ・偏りにあたるという事に理解が及んでいない」という意味で使われています。これも、振り返れば思い当たる事です。

 つまり、両者は以下のような解釈に行き着いています。

 アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)を、潜在的にあるステレオタイプや態度ではなく、「意識的な考えが偏りにあたると気づいていない事」、としているのです。

 彼らは「無意識」や「気づいていない」といった「潜在的」を説明する際にも登場する言葉は使っていますが、最終的な意味は本来のものとは異なります。



参考:

「あなたのチームがうまくいかないのは「無意識」の思い込みのせいです」

「ダイバーシティ&インクルージョン経営」

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