Thursday, February 13, 2025

地方創生2.0:第三回有識者会議 - 富山県と奈良県におけるコンサルタントの誤用事例 -

掲題の件について紹介し、意見を述べたいと思います。

第三回有識者会議は、令和7年1月25日に開催されました。

そこで紹介された「矢田稚子内閣総理大臣補佐官説明資料」(siryou1.pdf)のページ15では、「アンコンシャス・バイアスについて分かりやすく発信している例」として富山県の特設サイトを紹介しています(画像はクリックで拡大します)。

これは「思い込み」であり、「アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)」ではありません。従来からの「視野が狭い」「浅慮」「先入観」といった語彙で説明可能なことを、何故「アンコンシャス・バイアス」と殊更置き換えて表現するのでしょうか。アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)研究は、顕在的に報告されるものとは別の切り口で心の側面を測定するという独自性のある大きな成果を出したものだったのですが、日本ではその話題性だけが利用され、中身は全く異なるものが展開されています。富山県では、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の監修を受けており、その誤った教えをここでは展開している事になります。

同じ資料ページ16では、「小中学校の保護者・教員向け「出前講座」を開催」とあります。


これは、一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所が行った催しです(出前講座 | ジェンダー平等推進プロジェクト2030「アンコンシャス・バイアス解消アクション!」)。しかし、幾度もこのブログで指摘しているように、彼らは学術的なものとは乖離する独自定義の「アンコンシャスバイアス」を広めている団体です。独自定義と明示せず「アンコンシャスバイアス研究所」といった名前でその教えを広める活動している団体を、富山県も矢田稚子さんも全く検証せずに受け入れているようです。子供たちに対して、学術的に検証されていない内容を「講座」として教える事は不適切ではないでしょうか。


次に、株式会社WILL LAB代表取締役の子安美和さんの資料(siryou2.pdf)について述べます。資料ページ8、「意識調査からアンコンシャス・バイアスを可視化」という記載があります。


しかし、ここで行われた意識調査からは、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)そのものについての誤解が見られます。「アンコンシャス・バイアスの存在に関して約25%、ジェンダーギャップの存在に関して約30%が、感じないと回答。バイアス、ギャップは存在する事から、気付きを促す取組が必要」と記載があります。しかしアンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)の存在はIAT(潜在連合テスト、Implicit Association Test)等で計測されるものを指し、普段感じる・感じないものではありません。

同じく資料ページ9では、「アンコンシャス・バイアスの実態を調査」とあり、「ジェンダーに関するアンコンシャス・バイアスを感じる場面について」の例として、「女性は、仕事より家庭を優先すべきだという雰囲気がある」「職場でのお茶出しや雑用は女性がするべきだという職場風土がある」「男性は、家庭より仕事を優先すべきだという雰囲気がある」といったものが挙げられています。

これらは各自の「雰囲気や風土」に対する意識的なアンケート項目であって、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)についての調査項目ではありません。


上記のように、矢田さんが紹介した一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所の監修を受けた資料や、子安さんの資料からは、「アンコンシャス・バイアス」を「思い込み」「雰囲気や風土」と解釈している事が分かります。それらはアンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)と密接に関わっていると思われますが、アンコンシャス・バイアス(潜在的バイアス)そのものではありません。

現状では誤解を広めるような事になっているので、これからも様々な媒体を使い、より良く理解頂けるよう働きかけて行きたいと思います。

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